肝炎とは
肝臓に炎症が生じている状態が肝炎です。肝炎は急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。
急性肝炎とは
急性肝炎は、短期間で肝臓に炎症が発症した状態です。大半の原因は肝炎ウイルスの感染によるもので、同ウイルスにはA、B、C、D、Eと5種類あるのですが、急性肝炎を起こすタイプは、A、B、C、Eとされ、なかでもA型の患者さんが多く、次にB型、C型の順に続きます。また肝炎ウイルス以外でも、自己免疫反応の異常や薬剤によって引き起こされることもあります。
主な症状は、風邪のような症状(発熱、頭痛、喉の痛み など)、食欲不振、全身の倦怠感、嘔吐・吐き気のほか、黄疸や茶色っぽい尿がみられることもあります。ただ多くは一過性のもので、1ヵ月程度で治まることが多いですが、中には急激に肝機能が低下して、意識障害などが起きる肝性脳症などの急性肝不全の症状が出ることもあります。これを劇症肝炎と言います。
治療に関してですが、これといった治療は行われず、安静にしているか、点滴(栄養をとる)を打つといった内容になります。劇症肝炎については、発症の原因が肝炎ウイルスであれば抗ウイルス薬を投与します。自己免疫反応の異常や薬剤によって引き起こされているのであればステロイド投与などが行われますが、劇症肝炎そのものの治療法としては、血漿交換などの人工肝補助療法となります。ただ同療法で肝機能を回復させることは難しく、この場合は生体部分肝移植が検討されます。
慢性肝炎とは
慢性肝炎は、急性肝炎の症状が6ヵ月以上続いている状態です。発症原因の多くは肝炎ウイルス(とくにC型、次いでB型)とされ、自己免疫反応の異常による肝炎(自己免疫性肝炎)やアルコール性肝障害の慢性化によるものであるほか、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:アルコールが原因ではない脂肪肝)で炎症や線維化などもみられている非アルコール性脂肪肝炎が慢性化しているケースも考えられます。
よくみられる症状は、原因がはっきりしない不調で、食欲不振や易疲労感、全身の倦怠感といったものですが、何の症状も見受けられないという患者さんも少なくありません。
これといった治療もせずに放置が続くと、肝硬変や肝臓がんに進行してしまうことがあるため、これといった症状がなくても慢性肝炎と診断されたら速やかに治療を受けることをお勧めします。多くは血液検査によって診断がつきます。
治療は、原因によって異なります。例えば、肝炎ウイルス(B型、C型)が原因であれば、抗ウイルス薬を使用していきます。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)なら、生活習慣の改善(食事療法 など)や薬物療法(経口血糖降下薬 など)を行い、アルコール性肝炎では禁酒をし、食事療法(栄養価が高い食事 など)に努めます。
肝硬変とは
肝硬変は、主に慢性肝炎(ウイル性肝炎(B型、C型など)、自己免疫性肝炎、アルコール性肝障害、NASH など)によって、肝臓の細胞が線維化し、やがて肝臓自体も小さくなって硬化しまう病気です。さらに症状が進行することで、肝機能も著しく低下していき、それによって様々な症状がみられるようになります。
初期症状はほぼみられませんが、食欲不振や倦怠感などがみられることもあるほか、肝臓自体も線維化し始め、ゴツゴツした硬い状態となっています。ただこの時点では、肝機能は維持されているので、日常生活には特に影響は及んでいません。しかし、さらに症状が進行すると肝臓が正常に働くことが困難となって、黄疸、腹水、肝性脳症(アンモニアなどの有害物質が体内に蓄積、それが脳に達するなどして意識障害などを起こす)、クモ状血管腫、食道・胃静脈瘤などがみられるようになります。
患者さんにこれらの症状がみられると、診断をつけるための検査として、血液検査、腹部超音波検査(腹部エコー)、肝生検を行うなどします。当院の超音波検査は肝臓の線維化(=肝硬変の程度)や脂肪肝の程度を数値で表すことのできる技術を導入していますので、患者さんにもご自身の肝臓の状態がどの程度悪いのか、また治療によりどの程度良くなったのかが理解して頂けやすく、治療のモチベーションにつながります。
肝硬変と診断された場合、基本的には肝臓専門医の在籍する近隣の提携医療機関へご紹介致します。線維化してしまった肝細胞を元の状態に戻すことはできません。ただ線維化している状態でも、自覚症状がみられていない、あるいは倦怠感や食欲不振程度であれば、慢性肝炎の原因である治療を行っていくことで、病状の進行を抑えることができます。また肝硬変によって、はっきりした症状(合併症:腹水、肝性脳症、食道・胃静脈瘤、肝臓がん など)が現れている場合は、それらに対する治療が必要となります。